第二次大戦時の芝居「セツアンの善人」は、今の世界にぴったり当てはまる
ずっと稽古してきた芝居「セツアンの善人」が本日、10月16日からいよいよ開幕する。
原作はベルトルト・ブレヒト。ドイツの劇作家で代表作は「三文オペラ」。演出は数々のブレヒト作品を演出してきた白井晃氏。
ブレヒトの名前を聞いたことがあるだろうか。私もそれほどよく知っているわけではないのだが、「ちょい難しい芝居」というのがざっくりとした印象だった。ストーリーに起承転結があり、観客が主人公に感情移入して、最後には涙やハッピーエンドのカタルシスがあるといった従来の演劇とは違う。いやむしろ、そういうものを否定して、観客が芝居にのめり込もうとすると、逆に芝居がそれを断ち切ってしまう。これは登場人物が観客に話しかけたり、突然歌が始まり、場面が変わる「異化効果」と呼ばれる手法なのだが、皆さんは「え、別に珍しくないじゃん」と思われるだろう。そうなのだ。今やこういった手法は多用され、日本の小劇場でも珍しいことではない。とくに井上ひさし氏の作品は大きく影響を受けているように思われる。
しかし「セツアンの善人」が上演されたのは第2次世界大戦時。ドイツを離れ、ナチスの迫害から逃げながら書かれ、上演された。当時にしてはかなり前衛的だっただろう。