第二次大戦時の芝居「セツアンの善人」は、今の世界にぴったり当てはまる
お話はいかにも童話のようで、セツアンという貧しくすさんだ中国の架空の街に3人の神様が善人を探しにやって来る。若い娼婦のシェンテの親切に「善人であれ」とお礼の金を渡して去る。しかしシェンテは善行を施せば施すほど、他人からつけ入られて破滅していってしまう。
「この世に善人は存在できるのか」というテーマは、今のこの世界にぴったりと当てはまる。白井演出は舞台美術に無機質なプラスチックやゴミを多用し、セツアンの街を表現。
時にはそこが空港ロビーや被災地の避難所、がれきのウクライナやガザ地区にも見える。
主演の葵わかなさんはNHK「わろてんか」で主演した、見た目はとても可愛い愛くるしい女優さんだが、芯が強く、まさに役にピッタリで、しかも歌がうまく、今回もかなり難解な歌を見事にこなしている。相手役は木村達成くん、現在大河ドラマ「光る君へ」で三条天皇を演じる骨太なイケメンだ。
ほかにも多種多様な出自から集まった個性的な俳優陣がたくさん、群衆シーンではどこを見ても面白い。
私はなぜか赤信号の小宮と一緒に、神様のひとりをやっております。