ウイルスでⅠ型糖尿病発症も 大人も“春の感染症”に要注意
「実際、1型糖尿病の20%、その亜流である劇症1型糖尿病の実に70%は感染症が原因ではないかといわれています。ただし、数年前まではそれを証明する決め手はありませんでした」
永淵名誉教授が注目したのは、ウイルスの増殖を抑えるタンパク質産生に関わる「チロシンキナーゼ2遺伝子」。動物実験で、この遺伝子が変異すると膵臓のβ細胞がダメージを受け、糖尿病を発症することを突き止めた。
「健康な人331人、1型糖尿病患者さん302人、2型糖尿病患者さん314人を対象にこの遺伝子を調べたところ、健常者に比べて糖尿病患者さんの方が遺伝子変異している割合が2倍に当たる8~10%に上っていたのです。さらに、風邪症状後に1型糖尿病を発症した人を調べたところ、変異遺伝子を持っていた人の割合は13.7%と高率だったことがわかりました」
■お腹の風邪も要注意
もちろん、糖尿病発症に関係する遺伝子は他にもあるが、ウイルス感染から糖尿病を発症するまでの機序の一端が明らかになった意味は大きい。 国際糖尿病連合(IDF)によると、毎年8万6000人の子供が1型糖尿病を発症しており、発症数は毎年3%ずつ増加している。