CAR-T細胞療法 細胞を“とって増やして戻す”新がん治療法
基盤技術とは、免疫にかかわる細胞間の情報を伝達する「サイトカイン」や「ケモカイン」といった物質を産生する能力をもつCAR―T細胞を作製する技術。この免疫細胞を使うことで固形がんに対して優れた反応性を示し、増殖能や遊走能の向上も確認できているという。あとはがん種ごとの標的となる抗原を見つけることが必要だが、技術的にはそれほど難しくはないという。
ところで、米国で承認されたCAR―T細胞療法の薬価は、日本円で5000万円以上と高額なことでも話題になっている。次世代型が開発されてもやはり高額になるのか。
「承認されて当面は高額になると思いますが、普及する時代がくれば安くなる可能性はあります。それも迅速に国内で産業化できるかどうかが大きく関係するでしょう」
山口大学の玉田耕治教授らの研究チームが、固形がんの治療に効果を示す次世代型CAR―T細胞療法を開発したことを3月5日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジー電子版に発表した。がん細胞を移植したマウスで確かめたところ、ほぼすべてでがんが完全に消失したという。
▽1993年山口大学医学部卒。米国ジョンズ・ホプキンス大学、山口大学医学部などの腫瘍科や外科勤務を経て、2014年から現職。先端医療開発センター・免疫療法開発分野(築地)の分野長を兼務。〈所属学会〉米国癌学会、日本消化器外科学会、日本がん免疫学会など。