梅毒<3>初期症状は2~5週間で消えるが治ったわけではない
急増する梅毒の見逃してはいけない初期症状(早期第1期)は、性器や肛門周辺にできる「しこり(初期硬結)」や「潰瘍(硬性下疳=げかん)」。加えて、股間のリンパ節が腫れることがある。しかし、痛みなどの自覚症状がないので、気づきにくい。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。
「感染した部位にできた初期硬結はしだいに中心部から潰瘍(硬性下疳)になります。しかし、女性の好発部位は大陰唇や小陰唇で見逃しやすい。感染女性の約50%は、この潰瘍に気づかず見過ごされています。子宮頚部にも発症することを忘れてはいけません」
ところが、硬性下疳は無治療でも2~5週間で自然に消えてしまう。決して治ったわけではない。病原菌が皮膚の病巣から体内に移ったにすぎない。第2潜伏期に入り、病原菌は徐々に増え続ける。この期間も他の人にうつす可能性がある。
そして増殖した菌は血流に乗り全身に運ばれ、再び症状(早期第2期)が出現するのは感染から3カ月後くらいだ。全身の皮膚や粘膜に発疹が現れる。胴体を中心に薄い発赤が無数にできる「バラ疹」。手のひらや足裏に赤褐色の発赤や隆起ができる「梅毒性乾癬(かんせん)」。肛門周囲に多数現れる「扁平コンジローマ」。頭髪がまばらに抜ける「梅毒性脱毛」などが特徴だ。第2期症状も1カ月ほどで自然に消えるが、無治療だと何度も繰り返す場合がある。そして感染後3年経つと「後期梅毒」となり、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)ができる第3期の症状が現れる。しかし、現在はこの段階まで治療されないケースはほとんどないという。