高齢者が抗生物質を長期服用すると心臓病リスクが高まる?
細菌の増殖を抑える抗生物質は、細菌感染症の治療にとって重要な薬です。かつては風邪などのウイルス感染症であっても、2次的な細菌感染を予防する目的で処方されることもありました。しかし抗生物質が効かない耐性菌の出現を防ぐために、現在では厚生労働省を中心に、その適正使用が呼びかけられています。
抗生物質の代表的な副作用として下痢が挙げられますが、一部の薬剤では不整脈や心臓病の発症率を高める可能性が報告されています。
そんな中、抗生物質と心臓病の関連性を検討した研究論文が、欧州心臓病学会誌の電子版に2019年4月24日付で掲載されました。
この研究では米国の看護師3万6429人が対象となっています。若年(20~39歳)、中年(40~59歳)、高年(60歳以上)における抗生物質の使用状況が調査され、心臓病の発症リスクが検討されました。なお、結果に影響を与え得る年齢や生活習慣などの因子について、統計的に補正して解析をしています。
平均で7・6年間にわたる追跡調査の結果、高年で抗生物質を2カ月以上使用した人では、同年代で抗生物質を使用していない人と比べ、心臓病のリスクが32%、統計学的にも有意に増加しました。他方で若年、中年では明確なリスク上昇は示されませんでした。また2カ月未満の短期使用についてはいずれの年代でもリスクの増加は示されませんでした。
抗生物質の使用頻度が多い人は、もともと健康状態が良くない人だった可能性があります。従って抗生物質が心臓病を引き起こすと結論することは難しいですが、その使用を必要最低限にとどめることは心臓病のリスク増加だけでなく、耐性菌の発現を抑止するうえでも有用でしょう。