最新の研究で「拡張障害型心不全」に新たな治療の可能性
拡張障害型の大きな特徴は「心臓の筋肉が線維化して硬くなる」ことです。本来、筋肉として働く心筋細胞が線維に置き換わり、収縮性を失って広がらなくなってしまうのです。線維化は、たとえば心筋梗塞が治癒していく過程でも起こります。機能しなくなった心筋細胞を線維化することで除去し、弱くなった部分を補強していくのです。ただ、線維化のされ方によってはかさぶたのような状態になって不整脈を起こす原因になってしまう場合もあります。
心筋細胞の線維化は、常に圧力を受ける心臓の壁が再生されることで起こります。しかし、それが筋肉に変わることはなく、範囲の決定などその詳細なメカニズムははっきりわかっていません。幼少期の発育不良などが要因になるケースもありますが、多くはウイルス感染がきっかけになって起こります。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどが心筋にも感染して心筋炎を発症し、それが慢性化して線維化を招きます。ほかに糖尿病が原因になるケースも少なくありません。
拡張障害型に対しては、決定的な治療法もまだ確立していないのが現状です。筋芽細胞シートを使って線維化してしまった心筋を元に戻す再生医療の研究が進んでいますが、すべてのケースに有効なわけではありません。一般的には、ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)やβ遮断薬といった心不全に有効とされている薬をうまく組み合わせて対処するくらいしか手だてがありません。バイパス手術などの治療を行っても、心筋が線維に置き換わっていってしまう状況を止められないのです。