ミッキー吉野さん 糖尿病が悪化し狭心症、脳梗塞と…医師の“脅し”に助けられた
翌年にはゴダイゴ再結成ツアーを控えていたので、リハビリのためにあえて左手を多く使う曲を練習しました。「不安」というよりも、「一生懸命」だったような気がします。
ツアー中はつらかったです。左手の動きが悪いことは自分が一番よく分かりますからね。でも、ステージに立つと不思議なもので、思ったよりも弾けたんです(笑い)。
あれから20年がたち、左手の動きの遅さに苛立つような時期は越えました。10年ぐらいは憂鬱でしたけれど、それを越えたら、この左手でできる演奏を創意工夫することが楽しくなってきたんです。作風も変わりました。昔は正確性や速弾きに力を入れていましたが、今はスローハンド。味がある演奏っていうのかな。和音の構成を変えたり、右手の可動域を広げてカバーしたり、考え得ることはやり尽くした気がしています。
思えば、米国のバークリー音楽大学にいた頃も、そんなことの連続でした。自分は周りに比べて手が小さいので、指の短さをカバーするために和音を変えたりしていました。そうした経験が脳梗塞の後遺症をカバーすることにも生きている気がします。今までの演奏とは違うけれど、それに劣らぬようカバーするテクニックがまた素晴らしいの(笑い)。