悪性リンパ腫と闘う若者は友人の死に泣きながらギターを弾いていた
彼らは、病気が悪化していく状況で、どうしようもない苦悩をD医師や看護師に訴えることもありました。ある時は、仲間の患者が言えないことをA君が本人に代わってD医師に訴え、またある時は、言葉にならず涙目でその心境を訴えました。
同じ病気でも、再発する患者としない患者、治る患者と治らない患者がいます。病気のどこに違いがあるのか、D医師たちにも分かりません。運命としか言えませんでした。
病気が悪化していく患者と、健康な医療者とでは立場が違います。患者の話を一生懸命聞くD医師は、いつも同じ答えしか返せません。
「また良くなるから頑張ろう」
A君は入院治療を繰り返し、勤務していた会社を辞めることになりました。その1年後、A君は亡くなりました。
病院を訪れたA君の母親は「お世話になりました。ありがとうございました」と、D医師に頭を下げます。D医師は「こちらこそ。A君には、私たちもみんなもたくさんお世話になりました」と答えました。