入院5回目のがん患者は孫の動画を見て「一緒に歌う」と心に決めた
入院するP総合病院の外来の廊下の一隅で、一人一人カーテンで区切られたところに座って、蓋つきの試験管のようなチューブに唾液をためて提出します。PCR検査のために入院する直前に病院まで行くことは、遠方の方には気の毒だと思いましたが、「病院はコロナ対策をしっかり行っているのだ」と考えました。もし陽性と連絡がきたら入院が延期になるのですが、幸い陰性で予定通り入院できました。
入院当日、付き添いの妻に荷物を持ってもらっていましたが、病棟の中に入れるのは私ひとりです。病室で着替え、治療の同意書にサインした後は、何もやることがなくなりました。病気のこと、治療法のこと、そして悪い結果になるのではないか……などが頭に浮かび不安でした。
病室の窓から眼下には近くの駅が見え、何本もの線路の上を電車が交互に走っています。
ふと、スマホのスイッチを入れてみると、たったひとりの、2歳10カ月になる孫(N君)が歌っている動画が届いていました。
「せ~んろはちゅじゅく~よ ど~こまでも~ の~をこえ やまこ~え た~にこえて~ は~るかな まちま~で ぼくたちゅの~ た~のしいたびの~ゆめ~ ちゅ~ないでる~」