糖尿病の人は歯科治療を受けるときは「感染」と「低血糖」に注意
感染対策だけでなく、「血糖値の急激な変動」にも気を付ける必要がある。歯科治療では、精神的にも肉体的にも大きなストレスがかかるため、血糖値が急激に上昇する。われわれはストレスを感じると交感神経が活発になり、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが多く分泌される。これらのホルモンは血圧や心拍数、血糖値を上げる作用があるため、糖尿病の人がきちんと血糖コントロールができていないと、想像以上に血糖値が上がってしまう。
「反対に血糖値が下がりすぎて低血糖を引き起こすケースもあります。糖尿病の患者さんは普段から経口薬やインスリン注射などで血糖を下げていますが、薬を使ってから食事をとらずに歯科治療を受けると、治療中に急激に血糖値が下がってしまう危険があるのです。低血糖は血糖が乱高下した時にも起こるので、治療のストレスで血糖が上昇している状態ではさらにリスクがアップするといえます。低血糖が重症化すると、意識消失や昏睡状態になって命に関わるので、万一に備えて血糖値を上げるためのグルカゴン製剤を常備しているクリニックもあるほどです。糖尿病の患者さんは、食事前で空腹な時間帯の診療予約を避けるなど、低血糖を起こさないようにする注意が必要です」
糖尿病の人は、歯科治療による「感染」と「低血糖」のリスクが高いことを頭に入れ、きちんと血糖コントロールをしたうえで治療に臨む必要がある。