末期胃がんの父親に、なんとか故郷の景色を見せてあげたい
「最後に生まれ育った故郷の風景を見たいと、父が……」
こんな相談があったのはつい先日のこと。昨年11月に胃がんの末期と診断された男性、Kさん(70代)の息子さんからです。
Kさんの在宅医療が開始されたのは今年7月中旬ごろ。ご本人の希望は「(がんの治療を受けている)大学病院で治療を継続したい」というものでしたが、すでに自力では立ち上がれなくなっており、ADL(日常生活動作)のレベルがかなり低下。抗がん剤治療も途中で打ち切りとなり、主治医から「緩和治療を」と強く勧められ、渋々それを受け入れた様子でした。
ただ、Kさんは胃がんと診断されるまではほとんど病院にかかったことがないほどの健康体だったそうで、それもあってか、ご本人と奥さまは、「緩和」の意味をきちんと理解できていないように見受けられました。
一方、病院から引き継いだ情報では、「手術で胃を全摘。しかし、がんは全身に散らばっており、予後は1年ほど」といった厳しい状況を示す内容でした。
息子さんの相談はこのようなものでした。