“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない
みなさんは「プラセボ」という言葉をご存じでしょうか? 日本語だと「偽薬」と訳されることがほとんどで、具体的には有効成分が入っていないクスリのことを意味しています。
なぜそんなものが存在しているのかというと、人間というのは心の影響を受けやすいからです。実際、有効成分が入っていないはずのプラセボでも、一定数の患者は効果が得られるケースがあります。これを「プラセボ効果」といいます。プラセボがどうして効果を発揮するのかは完全には明らかになってはいませんが、暗示などの心の影響が強いのではと考えられています。
このプラセボは、世の中に出てくる前に行われる臨床試験によく用いられます。臨床試験では、新しいクスリの安全性だけでなく有効性も確認しなければなりません。よく用いられる方法が二重盲検試験というもので、実際に有効成分が入っているクスリを投与する群と、プラセボを投与する群の2つに無作為に分け、クスリの有効性を確認します。つまり、「プラセボ効果を加味しても、新しいクスリには有効性が確認できたよ」という証明をするのです。事実、臨床試験に参加する患者は、自分が服用・使用しているクスリに有効成分が入っているのか、もしくはプラセボなのかは知らされません。