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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

アルツハイマー型認知症の治療薬レカネマブ…6カ月使ったらどんな変化が生じたか?

公開日: 更新日:

副反応の出現率は臨床試験より上…投与中止に至ったのは3例

 6カ月間の経過を見た患者さんは、男性9人、女性16人の計25人(平均73.2歳)です。当院での投与1例目から連続25例目までの方になります。

 6カ月間での副作用発現について、注入に伴う反応は25例中7例(発現率28%)。アミロイド関連画像異常ARIAは25例中5例(20%)。

 レカネマブの第3相臨床試験では、859人のうち日本人が88人でした。日本人だけの副作用発現率を見ると、注入への反応は10.2%、ARIAは14.8%なので、臨床試験よりも当院の患者さん25例、つまり実臨床の方が副作用の発現が多くなっています。ただし、1回目、2回目に出てくる方がほとんど。また高齢ほど副作用が出る方が多かった。

 ARIAでは重症例2例、中等度1例、軽度2例。このうち点滴中止が3例ありました。

 点滴中止で様子を見た3例の患者さんは、いずれも4カ月後のMRIで画像異常がほぼ消失されていることが確認されました。

 そのうちの1人、70代後半の女性では、レカネマブの点滴前、点滴1回目、2回目と問題がなかったのですが、3回目で吐き気、混乱などの症状。近所の脳外科に緊急入院し、MRIを撮ると画像上で脳浮腫が見られました。しかし症状はそのあと消えて通常の状態に戻りました。

 また、80代の患者さんでは、1回目の点滴から2カ月ほど経った頃に困惑・混乱症状が現れ、「お世話になりました」と言って自転車で出かけ、翌日に帰宅されました。MRIで微小出血があり、点滴は中止となりましたが、精神症状が出たのは1回だけ。4カ月後の画像診断ではARIAはほぼ消えていました。

 物忘れの検査も行っています。認知機能を評価するMMSE検査では、一人一人では上がっている人、下がっている人がいて、80%が継続投与が適切という結果。しかし6カ月という短い期間ということもあり、平均値となると、有意差はありませんでした。

 レカネマブは、投与前にアミロイドPETでアミロイドβの量を測定することは必須(保険適用)ですが、それ以降、2回目のアミロイドPETは自費になります。つまり、レカネマブでアミロイドβがどうなっているかは保険適用では調べられません。ただ、他の患者さんになりますが、半年治療後に自費でアミロイドPETを受けたところ、4例全員がアミロイドβ減少となっていました。

 今後もレカネマブの投与でどういう経過をたどるのか、患者さんとともに治療を継続していきたいと考えています。

【連載】第一人者が教える 認知症のすべて

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