「わたしたちは、海」カツセマサヒコ著
「わたしたちは、海」カツセマサヒコ著
ずっと内陸部で育った「俺」は母と一緒に父親から逃げ、さらに母親からも逃げるように上京して20年近く東京にいたが、2カ月前に海の近くのアパートに引っ越してきた。
ハンバーガーショップに入ったとき、「もしもし」と声をかけられた。昔付き合っていた深水サチコだった。12年経って38歳になっていた。話を聞いてほしそうだったが、息子のお迎えがあるからと帰って行った。
俺は店を出て、海とは反対の方向に向かった。恋愛とはほど遠い映画を見たいと思ったが、映画館は「臨時休業」だった。後日、再会した時、サチコは実は夫とは別れたと言った。(「徒波」)
海の近くの街で生まれた7編の物語。 (光文社 1870円)