(11)東京で連絡を受けるだけ…じわじわと気持ちが追い詰められていった

公開日: 更新日:

 しかし、どの報告でも母の心身の状態がいいようには思えないのだ。母の状態を想像することしかできない私は、心から疲れてしまった。自分が実家に帰って母の世話をすることができず、叔母たちに頼っているという罪悪感にも苦しんだ。

 叔母たちは元気がいいといっても80歳前後。当然、それぞれの家庭もあり事情も抱えている。それでも献身的に実家に通って母の面倒を見てくれるのは、どういうことなのだろう。

 私は、この姉妹の絆に圧倒されていた。決して裕福ではない農家に生まれ育った彼女たちは、多くの苦労を一緒に乗り越えてきたことだろう。80代になってなお、そのつながりが続いていることに、兄弟姉妹のいない私はうらやましさも感じるのだった。

 それは同時に、私自身が年を取ったとき、助けてくれる人はいないという予告でもあった。友達づきあいもそれなりにしてきた母だったが、今、このような状態になっていることを知っている人もいないだろう。知ったところで、誰かが具体的な手伝いをしてくれるとも思えない。


 要介護認定を受ける前と、医療にアクセスする前のこういった空白期間をどう乗り切ればいいのだろうと考えながら、東京で連絡を受けるだけの私の気持ちはじわじわと追い詰められていった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  2. 2

    フジ火9「人事の人見」は大ブーメラン?地上波単独初主演Travis Japan松田元太の“黒歴史”になる恐れ

  3. 3

    PL学園で僕が直面した壮絶すぎる「鉄の掟」…部屋では常に正座で笑顔も禁止、身も心も休まらず

  4. 4

    石橋貴明のセクハラに芸能界のドンが一喝の過去…フジも「みなさんのおかげです」“保毛尾田保毛男”で一緒に悪ノリ

  5. 5

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  1. 6

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  2. 7

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  5. 10

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ