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夏樹久視作家

1947年東京生まれ。週刊誌アンカー、紀行作家、料理評論家などを経て推理作家に。別名で執筆の多くの作品が話題を呼びTVドラマ化。母親の認知症を機に、65歳でヘルパー2級の資格を取得、約5年間、デイサービスでの就業を経験する。紀行文、料理本、ミステリーなど著書多数。日本推理作家協会員。

「その気がなくて…」ヘルパーの色仕掛けをシャットアウトした男性の賢い対応

公開日: 更新日:

「断ったのですか」

「ちょっと気持ちが揺れたけど、私にはその気がないから」

「そうでしたか」

 軽い認知症だが、池端さんは「色仕掛け」を感じて賢い対応をしたのだ。しばらくすると、その女性ヘルパーは姿を見せなくなった。そんな折、新聞でこんな記事を目にした。

「相続トラブル、各地で頻発! 一人暮らしの高齢者が被害」

 一人暮らしのお年寄りにヘルパーとして接近。献身的な介助の一方で、婚姻や養子縁組などの姻戚関係をつくり、遺産相続を狙う。あるいはヘルパーである自分に遺産の一部を相続させるための遺書を書かせる。そんなトラブルが頻発しているとか。

 それにしても池端さんに「その気」がなくてよかった。ごく少数だろうが介護の世界には、こうした「危険分子」が潜んでいる。高齢の親を持つ人は肝に銘じておいたほうがいい。

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