「鳩レース」に情熱を傾ける人たち…歌手・大森あきらさんの場合
日本鳩レース協会の宮川幸雄さんに聞く 鳩なんでもQ&A
【Q1】鳩と日本人の付き合いはいつからですか?
「伝書鳩については歴史が古く、元寇をきっかけに鎌倉時代には飼われ始めたとも伝えられます。その後、通信や諜報手段として利用され、明治以降は陸軍が情報伝達に利用していました」
豊臣政権末期、石田三成の西軍側が徳川家康の東軍側の情勢をいち早く知るため、伝書鳩を利用したという記録がある。家康など戦国武将が鷹狩りを奨励したのは、敵の諜報網である「鳩」の飛翔を妨害するのも目的のひとつだった。
【Q2】新聞社でも鳩が活躍していたって本当?
「明治から昭和30年代までは鳩が伝送の役目を果たしていました。取材に行く際、記者は鳩を持って出かけます。そこで取材したメモや写真フィルムを『信書管』に入れて鳩に運んでもらう。当時、朝日、読売、毎日新聞は有楽町・銀座に社屋がありましたが、例えば埼玉県所沢なら小1時間で戻ってきます」
鳩による伝送は1966年に朝日新聞大阪本社が廃止するまで続いた。
【Q3】鳩はどれくらいのスピードで飛びますか?
「鳩レースでは、個体認識用の足輪にICチップを埋め込み、記録機が帰還タイムを自動で計測します。とはいえ、ゴールとなる鳩舎は同じ東京でもまちまちですので、分速で順位を決めます。短距離なら分速1.5キロほどになります」
ちなみに、3月に開催された兵庫県地区連盟の大会(新潟~関西400キロ)では、分速約1408メートル(時速約84キロ)の鳩が1位だった。
【Q4】鳩1羽のお値段はどれくらいですか?
「かつて日本でも高額なもので1羽100万円といった時代もありましたが、今はそれほど高くはありません」
1羽数千~5万円くらいが一般的。一方、2020年にベルギーの「ニューキム号」が、鳩レースが盛んな中国人に史上最高額160万ユーロ(約2億円=当時)で落札されている。
【Q5】3年前の東京五輪でなぜ飛ばさなかった?
「1964年の東京五輪開会式では、平和の象徴として8000羽の鳩が青空に放たれましたが、今回は飛ばされませんでした。アメリカの放送時間の兼ね合いとされますが、開会式が夜に行われたためです。鳩は夜間は飛びません」
鳩の帰巣本能は解明されていないことも多いが、太陽の位置と体内時計で自分のいる場所を測ったり、すぐれた視力で目標の場所を知るなどの説がある。
【Q6】現在の愛鳩家の人数はどれくらいですか?
「日本鳩レース協会の会員は現在1万人ほど。日本全体で約2万人の愛鳩家がいるとされます。しかし、ブームを担った世代がそのまま高齢化しており、若い会員の増加が急務になっています」