著者のコラム一覧
姫田小夏ジャーナリスト

中国・アジアを身近に捉える取材に取り組む。中国ウオッチは25年超、中国滞在経験も長い。アジア・ビズ・フォーラム主宰。日刊ゲンダイでの連載などをもとに「ポストコロナと中国の世界観 」(集広舎)。

マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

公開日: 更新日:

タクシー運転手は「絶対に行かない」

 マレーシアのSNSでは「売り場の家具の扉が勝手に開くのを目撃した」「このプロジェクトに携わったエンジニアが超常現象を見た」などと騒がれた。筆者が乗った華人のタクシー運転手は「ららぽーとには絶対に行かない」と言い切っていた。

 そこまで極端に嫌われるのは、第2次世界大戦中、日本軍がプドゥ刑務所を捕虜収容所として使い、連合軍や地元市民の多くが拷問を受け、斬首されたという歴史があるからだ。

 日本軍はとりわけ現地の華人を「敵の中国を財政的に支援した」という疑いをかけ殺害した。マレーシアの大学で教壇に立つ日本人研究者は次のようにコメントする。

「負の歴史遺産をどう継承するかが課題となる中、マレーシア側がプドゥ刑務所を解体し、再開発したがっていた可能性も推察されます」

 東南アジアでの日本軍の足跡について調査活動をする大東文化大学名誉教授の田中寛氏は、「加害側よりも被害側の記憶ははるかに鮮烈で、特にアジアでの戦争の歴史は、向き合い方次第でビジネスに大きく影響します」と語る。

 三井不動産に客離れの原因について質問したが、これには触れず「来客者数の増加、売り上げ改善に向けて事業推進中」とだけ回答があった。戦争は過去のもの──そう割り切ってしまったところに最大の誤算があったのかもしれない。 =つづく

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V奪還を手繰り寄せる“陰の仕事人” ファームで投手を「魔改造」、エース戸郷も菅野も心酔中

  2. 2

    ドジャース地区V逸なら大谷が“戦犯”扱いに…「50-50」達成の裏で気になるデータ

  3. 3

    大谷に懸念される「エポックメーキングの反動」…イチロー、カブレラもポストシーズンで苦しんだ

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  1. 6

    やす子の激走で「24時間テレビ」は“大成功”のはずが…若い視聴者からソッポで日テレ大慌て

  2. 7

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩

  3. 8

    堂本剛、松本潤、中山優馬…そして「HiHi Jets」髙橋優斗の退所でファンが迎えるジャニーズの終焉

  4. 9

    「光る君へ」一条天皇→「無能の鷹」ひ弱見え男子…塩野瑛久は柄本佑を超える“色っぽい男”になれる逸材

  5. 10

    虎の主砲・大山を巡り巨人阪神“場外乱闘”に突入か…メジャー挑戦濃厚な岡本の去就がカギを握る