グンゼ 佐口敏康社長(1)1896年創業「群是製絲」の社名に込められた思い
「当時は蚕糸業を営む農家が多かったのですが、非常に貧しかった。その貧しい地域を、なんとか産業を興して少しでも裕福に幸せにしたい、という思いがもともとの発祥です。最初から地域に貢献して、人々の暮らしを向上させていくことを目指してきたんです」(佐口氏)
鶴吉は養蚕農家の子どもたちの厳しい暮らしを知り、蚕糸業を研究した。地場蚕糸の品質が東京・上野の品評会で「粗悪」と酷評されたことから1886年に蚕糸業組合の初代組合長に就任し、繭・生糸の品質向上や技術者の育成に尽力。その10年後、兄を初代社長とする郡是製絲株式会社を設立した。社名の「郡是(ぐんぜ)」は「郡の是となる」の意味だ。
「創業したのは資本家が会社をつくり産業を興していくブームの時代でしたが、グンゼは最初から株式会社本来の典型的な形をとりました。一株一株を地元の人に持ってもらった。今でいう個人株主です。それを束ねて会社組織にしたのです」
今も続く個人株主の比率が高い理由がこの発祥の歴史にあるという。もうひとつ、創業当時の流れをくむ特徴が、“社長”の継承だ。