「創業者の後の数代は創業家一族が社長を務める会社が多いと思いますが、鶴吉に子どもがいなかったこともあって、2代目には当時の専務が社長に就任しました」
4代目に創業者の養子が社長になった例外を除き、世襲的な継承はない。工場は大勢の個人株主の娘たちを“工女”として雇用し、裁縫などの教育も施す一種の職業学校でもあった。今のグンゼが掲げる「社会的利益と経済的利益を両立させるサステナブル経営」の源流がそこに見える。現在も登記上の本社が綾部市にあることは、創業の精神を守る意思の表れだろう。
しかし、創業から40年後、祖業である絹糸の時代は終わりに近づきつつあった。(つづく)
(ジャーナリスト・中西美穂)