スバルの新ハイブリッドで豪雪の酸ヶ湯に行ってもなぜか安心できちゃった件
スバル クロストレック Premium S:HEV(車両価格:¥3,833,500/税込み~)
数週間前に紹介した、スバル初のストロングハイブリッド搭載の新型クロストレック Premium S:HEV。既存のコンパクトSUVに、スバルがほぼ独自開発した新2.5ℓフラット4ハイブリッドを搭載した追加モデルで、気になるWLTCモード燃費は18.9km/ℓ。エンジン排気量は大きめで、トヨタやホンダハイブリッドほど燃費スペックは良くないが、好調に売れて注目を集めている。
何よりもこのクルマの真価は、燃費以上にタフな悪路走破性と骨太な走り味にある。よって今回は新型クロストレックで有名な豪雪地帯、青森県の酸ヶ湯を走ってみた。積雪が平気で4mを超えるトンでもないところだ。
さて新ハイブリッド=S:HEVの最大のキモは、「シクミはトヨタ」で「要素技術はスバル」という合わせ技っぷりにある。
エンジン出力を動力分割機構で2分割し、1つを第2モーターパワーと合わせてタイヤを駆動したり、もう1つを発電用にしてバッテリーに電気を貯めたりするところは一緒。エネルギーを上手に出し入れしながら燃費を稼ぐのだ。
縦置きフラット4にシンメトリカルAWDで構成
ただしトヨタハイブリッドの場合、そのハイブリッドユニットを普通の横置きFFエンジンと組み合わせるが、スバルS:HEVは同社自慢の縦置きフラット4と組み合わせ、同社自慢のシンメトリカルAWD=前後左右に重量バランスが取れた低重心4駆システムを構成する。骨格の基本特性が凡百のFF系ハイブリッドとは違うのだ。
加えてトヨタ THSⅡの4駆モデルはリアタイヤ駆動に大抵電気モーターを使うが、S:HEVはあくまでもプロペラシャフトを使ってリアを回し、フロントとリアタイヤをほぼ同期させつつ4輪駆動を行う。
当然のことながら、燃費的には重いプロペラシャフトと余計な摩擦のないリア電動のが有利。事実、ボディサイズがかなり近いカローラ クロス ハイブリッド4WDは、モード燃費でリッター24.5kmを記録。クロトレ Premium S:HEVよりリッター辺り5km以上も燃費がいいわけだ。
しかしその分、クロストレック Premium S:HEVは確かに走りの安定感で勝っている。
背こそ普通だがアンコ型力士のような安定感
今回は青森駅から約30キロ離れた酸ヶ湯温泉に向かったが、街中は最初ドライ路面だったのが徐々に雪が降り出し、登坂路で徐々に滑りやすくなっていった。最終的に酸ヶ湯に着く頃には3mの雪壁はもちろん、路面にも数cmの雪が踏み固められていた。
そこでクロトレ Premium S:HEVが印象的だったのは、ステアリングフィールや乗り心地がほぼ変わらず、安心感がずっと高かったことだ。さらに加速時に一体感があったことだ。
確かに路面に雪が溜まるにつれ、ステアリングは軽くなり、ブレーキを強くかけるとタイヤがロックしそうになった。挙げ句にゴールの酸ヶ湯近くになると、明らかに加速時のタイヤの空転も増えていった。
ただし、クロストレック Premium S:HEVはどんな状況になっても基本的な手応えは変わらないのだ。ガッチリと守られ感のあるボディに、タイヤで路面を切っている感覚のあるステアリング。しっかりした踏みごたえのブレーキペダル。すべてのレスポンスがよく、如実に状況が伝わってくる。
この辺りは単純なエンジンパワーや制御の問題じゃない。基本的なボディ剛性であり、重心の低さや左右バランスの良さが効いてくる。言わば背の高い欧米型の力士よりも、背こそ普通だがアンコ型力士の方が安定しているようなものだ。
ある種の“ローテク4駆ハイブリッド”なのかも
さらに本当に滑りやすい凍結路面の場合、リア電動4駆よりも、スバルのようなメカ4駆の方が確実に安定して発進する。タイヤ4輪がほぼ同様に動くからであり、1輪が空回りし始めると止めにくい電動4駆は、多少不安定な時がある。
正直に言うと、クロストレック Premium S:HEVは超ハイテクな最先端ハイブリッドじゃない。あえて燃費で不利なフラット4エンジンをベースとし、重いプロペラシャフトもまた捨てられない、ある種の“ローテク4駆ハイブリッド”なのかもしれない。
ただし、それが過酷な条件だと時おり類のないタフさを発揮するのである。電動100%の時代は言うほど近くはなく、まだまだ必要とされるローテクエンジン技術や自動車技術は存在する。それを痛感させられた酸ヶ湯ドライブなのであった。