オーバーツーリズムに住民の我慢も限界…政府は「訪日観光客6000万人」目標も現場の実情とは大きく乖離
■安全、安心を切り売り
政府は「2030年に6000万人の訪日観光客」を数値目標に据える。「日本の津々浦々を外国人観光客が訪れれば、地方創生になる」という目算だが、マクロの試算と現場の実情は乖離する。松山に観光客が集中する愛媛県では、他の地域も「観光で町おこし」を狙うが、Fさん(40代男性)は「それをする力が町や村にはもう残っていません」と語る。
外国人観光客の訪問先が高齢者ばかりの村だとしたら、商機は外国資本の手に落ちる。残念ながら「彼らの“やりたい放題”を止められるほど、自治体には対応能力がない」(元自治体職員Gさん)。
京都や鎌倉などの神社仏閣は、日本人(住人でさえ)が容易に訪問できなくなった。Eさんは「日本人が守り続けてきた文化や、納税者が築いた都市インフラ、あるいは目に見えない安心・安全という価値。それを切り売りしているのが今のインバウンドだ」と失望を隠さない。 (つづく)