迫る前代未聞の「現職大統領逮捕」…水面下でうごめく韓国与野党それぞれの思惑
韓国の尹錫悦大統領が宣布した非常戒厳による混迷は深まり、権力闘争は激しさを増す一方だ。尹大統領を内乱容疑で調べる高官犯罪捜査庁(高捜庁)は出頭要請を3度拒まれ、合同捜査本部を構える警察と公邸敷地内に踏み込んで拘束令状執行を試みるも、武装した大統領警護庁に阻まれ断念。期限が切れた6日、裁判所に再請求した。
捜査当局は「次回は積極的に拘束を試みる計画」と前のめりで、前例のない「現職大統領の逮捕」が現実味を帯びてきた。
この1カ月の韓国政界の動きは「全く先が読めず、まるでドラマや映画の世界」(大手紙特派員)。前代未聞の展開だ。レームダック大統領が政敵潰しで非常戒厳に走ったのもさることながら、大統領選の前倒し狙いで手段を選ばす猛攻する野党も凄まじい。
ザッと経緯を振り返ると、昨年12月3日に尹大統領が非常戒厳宣布。国会で過半数を占める野党に20回超も弾劾を乱発され、2025年予算の削減も強いられ、追い込まれた末の強権発動だった。与野党の抵抗で6時間ほどで解除。尹大統領に建議した同窓生の前国防相は逮捕後に移送された拘置所内で自殺未遂したものの、内乱の重要任務に従事したとして先月末に起訴された。警察は大統領室や与党「国民の力」の関係者ら計49人を被疑者として調べ、尹大統領をはじめ閣僚ら13人は立件された。
目下、与野党攻防の舞台は憲法裁判所だ。2度目の採決で弾劾訴追された尹大統領をめぐり、罷免の可否を審理中。6カ月以内に判断が下される。