89年日本シリーズの舞台裏を当時の投手コーチ中村稔氏が振り返る
1950年から始まった日本シリーズで、3連敗から4連勝して日本一に輝いたのは58年西鉄(現西武)、86年西武、89年巨人の3球団だけだ。当時、巨人の投手コーチだった中村稔氏が大逆転劇の舞台裏を振り返る。
「ちょっと部屋に来てくれ。務台さんが見えている」
中村コーチに藤田(元司)監督から電話があったのは89年10月24日の夜10時すぎだった。東京ドームでの日本シリーズでは、巨人ナインは近隣のホテルグランドパレス(九段下)に宿泊していた。
巨人はここまで近鉄(04年にオリックスと合併)に3連敗。スタッフミーティングを終え、中村コーチは部屋に戻り、ひと息ついていた時だった。電話の声でただならない事態が起こったことは何となくわかる。すぐに部屋を訪ねると、藤田監督と読売新聞社の務台光雄名誉会長がソファに座っていた。
そのシーズン、2位広島に9ゲーム差をつけてリーグ優勝。相手はオリックス、西武との競り合いを制した近鉄。戦前の予想は「巨人圧倒的有利」だった。