SBは即戦力期待も 田中正義が抱える「右肩痛」は大丈夫か
その瞬間、工藤監督の表情がほころんだ。
ドラフトの目玉・田中正義(創価大)は5球団の指名が競合、当たりクジを引いたのはソフトバンクだった。
「5分の1で、自分でも信じられない。足が震えた」
工藤監督は頬を紅潮させてこう言うと、「腕の振りより、球が速く感じる投手。開幕投手を目指せるだけの力はあるし、即戦力と考えている。早く投げる球が見たい」と続けた。
3年連続日本一を目指した絶対王者が、今季はレギュラーシーズンもCSも日本ハムの後塵を拝した。大学生ナンバーワン右腕とはいえ、ルーキーを「即戦力」と捉えなければならないほど、その台所は逼迫しているということだ。
田中の懸案事項は右肩だ。今春痛めて、この秋に復帰したばかり。高校時代にも一度、やっている。どこよりも創価大と太いパイプをもつ日本ハムも1位でいったことを考えれば、さほど深刻ではなさそうだが、肘と違って肩の故障は看過できない。時間をかけ、より慎重な調整が必要になるかもしれない。
加えて「変化球がいまひとつだし、フィールディングや牽制は、まだまだ磨く必要がある。素質はピカイチでも、いきなり一軍でバリバリ働ける保証はない」とは、あえて田中を指名しなかった球団の編成担当者。工藤監督が「即戦力」と喜々とするのは、早計かもしれない。