劇的幕切れに協会賛辞も…稀勢の里逆転Vの“危険な代償”
好角家の菅野宏三氏(ビジネス評論家)は「お涙ちょうだいはスポーツマスコミの得意技。騒ぐのはわかりますが……」と言って、こう続ける。
「あれだけの巨体がぶつかり合う大相撲は、常に大ケガの危険をはらんでいる。故障を抱えながら無理をすれば命取りにもなる。千秋楽の稀勢の里の取組を見ると、どうしても01年夏場所の横綱・貴乃花を思い出します」
菅野氏が言う01年夏場所では、13日目まで全勝の貴乃花が、14日目の大関・武双山戦で敗れ右膝の半月板を損傷。武蔵丸との優勝決定戦には勝ったが、その後は7場所連続休場。優勝はこのときが最後で、03年初場所途中に引退した。
「貴乃花は01年夏場所のケガが引退の引き金になった。今はモンゴル勢横綱に衰えが見え始め、30歳の日本人横綱には少しでも長く綱を張って欲しいのはみんなの願いです。優勝したから万々歳というだけでなく、こういう状況で土俵に上がることのリスクを考えるべきです。もしかすると貴乃花と同じように、今回の故障で引退に追い込まれるかもしれない。少なくとも来場所以降、ケガをしても休場しづらい環境を自らつくってしまったことになる。仮に来場所に出場できたとしてもダメージがさらに膨らむ可能性もあるわけです」(菅野氏)