著者のコラム一覧
安倍昌彦スポーツライター

1955年、宮城県生まれ。早大卒。アマ時代に捕手としてプレーした経験を生かし、ドラフト候補のボールを実際に受けて取材するスタイルを確立。通称「流しのブルペン捕手」。自身が責任編集を務める雑誌「野球人」を始め、著書、寄稿は多数。

社会人No.1左腕 田嶋大樹は“急性乱調”が絶対改善項目

公開日: 更新日:

 田嶋大樹(JR東日本・投手)は、いい時はとんでもなくいい。走者を背負ったセットポジションからでも、コンスタントに145キロ前後をマークする速球。左腕の生命線であるクロスファイアーが決まると、左打者も右打者も手が出ない。それどころか、捕手がボールの伸びに戸惑って捕球しそこねる場面すらある。いい時がそんなだから、〈いい時〉を見たスカウトは一様にその球質に惚れ込む。

 なのに、次の試合では前半でつかまって降板。特に立ち上がりの不安定さは〈絶対改善項目〉だろう。突然、はっきりとしたボール球を6球、7球と続けてしまう〈急性乱調〉は、プロとして致命傷にもなりかねない。

 腕の振りのしなやかさとそのスピードは抜群で、その上、腕が一瞬出遅れる感じの球持ちの良さは、打順3回り目になっても、まだ打者のタイミングを外している。スライダー、チェンジアップを見せながら、今の田嶋大樹のベストボールはあくまで速球だ。プロで働くには、その快速球に加えて、コントロール可能な変化球をまず1つ欲しい。

 この春、チームには日本ハム6位指名を辞退した左腕・山口裕次郎(履正社高)が加わった。高校生ルーキーとは思えない安定した実戦力を発揮し、すでに中心投手のひとりとして“奮投”する彼に刺激を受けながら、エース・田嶋大樹がどう〈変化〉していくのか注目したい。

▽たじま・だいき 1996年8月3日、栃木県生まれの20歳。佐野日大高(栃木)3年時に春甲子園で4強。182センチ、75キロ。左投げ左打ち。最速152キロ。

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