最も影響を与えた旗振り役 松坂大輔は永遠に“世代”の象徴
同い年の松坂と藤川のコントラストが、ここまで極端だからだろう。最近のネット上などでは「松坂世代という呼称はそろそろやめて、藤川世代に変えませんか?」などといったファンの声が目立つようになった。確かにそう思いたくもなるような現状だ。今季の松坂は一軍戦に2試合先発登板しただけで0勝1敗、防御率16・88だった。
しかし、それでもこの世代の象徴は松坂大輔なのだ、私はそう認識している。いわゆる〇〇世代の中に入る〇〇とは、その世代の時価評価としての最強選手のことではなく、その世代の多くの野球人に最も影響を与えた選手、その世代の旗振り役のことだろう。
だから、たとえその選手が衰えて満足に働けなくなったとしても、世代の象徴としての意義深さは変わらない。藤川球児も和田毅も、引退した杉内俊哉や村田修一も、同世代に松坂大輔という怪物がいて、その存在の強度を高校生のころから感じていたからこそ、一流選手になれたはずだ。
松坂はそれほどまでの投手だったのだ。私は虎党で、だから藤川には思い入れがあるけれど、だからといってこの世代を藤川世代だとはとらえられない。1998年秋のドラフトで西武に1位入団した松坂の輝き、その後の華々しい大活躍。あのころ、同じ年に阪神に1位入団した藤川のことを、私はいつも松坂と比較しながら見ていた。松坂に負けるな、いつか追いついてほしい、そんな期待を抱いていた。その時点で、藤川は永遠に松坂世代のひとりなのだ。
(火曜掲載)