気持ちの優しい伊良部秀輝が起用法についてコーチと口論
■メジャー移籍直前の異変
しかし、97年にヤンキースへ移籍する直前あたりから、伊良部の様子がおかしいなと感じ始めた。
「どういうことなんですか!」
伊良部が先発した試合だった。試合中にロッカールームへ着替えに行ったとき、その入り口付近で降板した直後の伊良部がコーチと口論していた。どうやら、起用法について納得がいかなかったようだった。
それまで、私はそんなシーンを見たことがなかった。気持ちが優しい半面、繊細なところがあっただけに、何かトラブルを抱えているのではないかと心配したほどだ。すると、同年オフには球団とスッタモンダした末に、ヤンキースへと移籍した。
伊良部はかねて、少しでも早いうちにメジャーへ挑戦したかったと聞いた。移籍前には伊良部と球団との契約について耳にしたこともあった。球団は前もって前年オフに、米国移籍を認めると伝えていたようだったが……。
私がロッテ監督時代の2011年、突然の訃報にショックを受けた。報道陣向けには、「気持ちの優しい選手だった。あれだけの投手がいながら(当時は)チーム状態が良くなかった。一緒に優勝したかったですね」とコメントした。
私はその前年(10年)に日本一を達成し、伊良部はヤンキース時代、阪神時代に優勝を経験していた。10年近くチームメートとして戦ってきただけに、ロッテのユニホームで一緒に祝杯を挙げたかった。=つづく