著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

ストライキの懸念も…新労使協定を巡る交渉が難航するカラクリと波紋

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■ぜいたく税基準額の引き下げ

 今回の最大の焦点は、2003年に導入されたぜいたく税の基準額の引き下げ問題である。

 年俸総額が基準額を超えた球団は、超過分に対する課徴金を支払うというぜいたく税は、球団に高額の年俸で有力選手と契約することをためらわせ、結果として実力も実績もある選手が特定の球団に集中する状況が緩和され、戦力の均衡化が進んだ。

 01年以降、ワールドシリーズを連覇した球団が現れていないのは、ぜいたく税制度の導入が一定の効果を持つことを示唆している。

 その一方でぜいたく税の存在が、課徴金を払ってでも選手を集めたい球団と、課徴金を回避するために選手の年俸を抑制する球団とを生んだことも事実である。年俸総額が基準額の範囲内にとどまるということは、選手会にとっては実質的に年俸総額制が導入されていることに他ならない。

 史上最長となった94年から95年にかけてのストライキは、経営陣による年俸総額制の導入を拒否することを目的としていた。

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