<3>大一番のオマーン戦に臨む森保ジャパン 日本らしい連係連動を発揮する舞台は整った
日本代表の命運を大きく左右するオマーン戦(現地16日、マスカット)が迫った。15日の前日会見では、森保一監督が現地記者からカタールW杯出場危機について問われる一幕があり、「一戦一戦力を出し切っていけば、必ずW杯出場権はつかみ取れる」と断言。自身の去就がかかる大一番に必ず勝つという強い覚悟をのぞかせた。
9年前のブラジルW杯最終予選では、清武弘嗣(C大阪)と岡崎慎司(カルタヘナ)のゴールで勝ち切った。ゲンのいいスルタン・カブース・スタジアムで、この再現はなるのか……。
15日のマスカットも快晴。日中は30度近くまで気温が上がり、真夏のような暑さとなった。が、陽が落ちてくると一気に涼しくなる。酷暑を回避できたのは日本にとって朗報と言っていい。
こうした中、15日には両国監督が前日会見に臨んだ。会場はオマーン代表が宿泊している空港近くの高級ホテル。筆者の滞在先からはタクシーで15分程度だ。が、タクシー代がピンキリなのが悩ましいところ。最近はウーバーなどのアプリも世界的に普及しているが、流しのタクシーは昔ながらの交渉制。行きは3リアル(900円)なのに、帰りは10リアル(3000円)を要求されたりするため、値切り交渉は熾烈を極める。中東に来るたびそれをやっていたが、今回はコロナ禍で交渉能力の感覚が鈍っているので、1回1回が大変だ。
オマーン人記者は森保監督に容赦ない質問
そうこうしながらホテルに到着。ひと足先に登場したのが森保監督だ。コロナ禍の昨今はオンライン会見ばかりで、リアル会見は珍しい。指揮官は総勢10人に満たない日本人記者相手でも緊張感を覚えたのかもしれない。後から「リアルとオンラインとどちらがいいですか」と尋ねると「私は小心者なんで、大勢の記者の方がいるとプレッシャーを感じます。でもリアルの方がいいですね」と笑顔で語っていた。そんな冗談交じりの発言ができるのも、最終予選突入後、初めて白星先行した精神的余裕からかもしれない。
少し和気あいあいとした空気も流れたが、それを打ち破ったのがオマーン人記者。日本を食ってやろうと虎視眈々と狙う敵国取材者が容赦のない質問を浴びせてきた。
「日本はこれまで通常、最初にW杯出場を決めるような国だが、ここまで厳しい戦いが続いている。今はサウジアラビアが首位を走っているが、この後、どういう戦いをしていくのか?」と。
そこで表情1つ変えないのが、処世術に長けた森保監督の強み。「土俵際にいることを忘れず戦っていかないといけない」と淡々と話し、円満な形で場を収めた。
スタジアムは日本完全アウェーの様相
続いて現れたのが挑戦者の敵将イバンコビッチ監督。敵地・大阪で日本にひと泡吹かせた余裕もどこかに感じられた。18日にオマーンの重要な祝日であるナショナルデーが控えていることもあり、「日本戦勝利を全国民に捧げたい」と力強くコメント。人々を鼓舞しすることも忘れなかった。
実際、この一戦の注目度は高いようだ。オマーン人記者によれば、16日の試合は3万4000人収容の50%に当たる1万7000人程度の観客が入る見通しで、日本にとってはまさに完全アウェー。10月のサウジアラビア戦(ジェッダ)のように嫌な雰囲気に飲み込まれないゲーム運びが必要不可欠となるのだ。
そんな中、良い縁起と言えるのは、日本が2004年と2012年にスルタン・カブース・スタジアムで勝った過去があること。前者はジーコジャパン時代のドイツW杯1次予選。鈴木隆行(現解説者)の一撃で1-0の白星を挙げた。後者は冒頭の通り、清武と岡崎のゴールで勝利。筆者はどちらも現地取材しているが、拮抗した展開の中でも、最後の最後に日本が地力の差を見せつける形だった。
練習ではベテラン勢がチームを引っ張る
そんな歴史を知るのは、大ベテランの川島永嗣(ストラスブール)と長友佑都(FC東京)くらいだろうが、好感触を持ちつつ大一番に挑めるのはいいこと。18時から同競技場で行われた公式練習でも彼らはイキイキとした様子を見せていた。円陣の後、長友は主将の吉田麻也(サンプドリア)らと先頭を走り、ボール回しでも一番大きな声を出して盛り上げた。
「長友不要論」も叫ばれるが、こういうギリギリの局面でチームを引っ張れるベテランがいることはやはり大きい。代表チームというのは、90分間の試合以外の部分もやはり重要なのだ。
ピッチ環境はところどころボコボコした部分もあり、埼玉スタジアムのような絨毯のような芝生とは言えないが、「ベトナムに比べれば全然いい」と関係者も話していた。
日本らしい連係連動を発揮する舞台は整った。あとは結果を出すだけだ。
果たして森保監督と日本の運命はいかに……。(つづく)