全豪OPついに開幕…政治まで絡んだ「ジョコビッチ事件」の真相はヤブの中
テニスの全豪オープンが始まる、ようだ。
ノバク・ジョコビッチの入国をめぐり敵意が火花を散らす異様な雰囲気だが、ポイントはチャンピオンの個性と南半球という舞台の特殊性だろう。
ジョコビッチは通算9勝、目下3連覇中という全豪の象徴的存在で、今回はグランドスラム通算20勝の記録更新がかかる主役中の主役。グルテンフリーの著書もあるほど肉体管理に厳格で、かねがねワクチン接種には反対の立場を取ってきた。戦乱のセルビアで育ち、声高に自己主張する点で、温厚なフェデラー、ナダルと一線を画している。
オーストラリアがコロナ前から検疫が厳しいことは旅行者の知るところで、中でも開催地の古都メルボルン(ビクトリア州)はコロナ禍に際し世界で最も長いロックダウンを敷き、市民は世界一不自由な生活を強いられてきた。ワクチン義務にこだわるのももっともで、普通なら大会は中止。実際に昨年、全豪の後のF1は大会直前にキャンセルにされている。
ビクトリア州やメルボルンにとって、テニスは特別だ。116年の伝統を誇り、全仏、ウィンブルドン、全米とともに世界4大大会に数えられる。ただ、この地位を固めたのは航空網の発達とフェデラーとナダルが出現した今世紀に入ってから。いまや開閉式の屋根付きコートが3面、クラシカルな街並みには小じゃれたレストラン、ブティックが並んで2週間の大会中は国内外の観光客で賑わう。初めて取材した1993年には1泊50豪ドル(当時約4000円)だった会場前のホテル「B&B」が150豪ドル(約1万3000円)。予約はいっぱいだという。