守田英正「覚醒の契機」 “森保Jの頭脳”を育てた流通経大・中野雄二監督に聞く
11月21日開幕の2022年カタールワールドカップ(W杯)に出場するサッカー日本代表で今、大卒選手が増えている。同大会アジア最終予選で、昨年11月のベトナム戦とオマーン戦のために選出された日本代表28人のうち、10人を占めたのだ。
今月1日にポルトガル1部リーグ、サンタクララから強豪スポルティングへの移籍が決まったMF守田英正(27)もそのひとりだ。攻守にバランスのとれた中盤の要「ボランチ」として、今や「森保ジャパンの頭脳」といわれる男を育てたのが、流通経大の中野雄二監督(59)である。100人を超えるプロ選手を輩出した名将が、発掘秘話からJリーグへの提言まで語り尽くした。
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──守田を金光大阪高からスカウトした。
「関東では情報がありませんでしたが、関西ではある程度知られた選手で、関西の大学から誘われたそうです。ただ、守田はプレミアリーグ(高体連加盟のトップ校とJリーグクラブのユース20チームが参加)で優勝した流経大柏高と試合をやってボロ負け。メンバーの大半はそのまま流通経済大学に上がると知って、彼らと同じ大学へ行って競争に勝てないなら、プロで活躍なんかできないと、守田の方から『セレクションを受けたい』と飛び込んできたんです」
──それはチャレンジ精神?
「大学4年時は出身地のガンバ大阪などからも声が掛かりました。それでも『一番強い川崎フロンターレ(F)に入って海外に出て、日本代表として22年のカタールW杯に出たい』と具体的な目標を立てていました。ずっと一つ上のレベルにチャレンジする道を選んでいます。大阪出身だからガンバを選ぶかと思いましたが、川崎Fからポルトガルリーグへ移籍して日本代表入り。これまではほぼ計画通りです(笑)」
──大学での4年間は順風満帆でしたか?
「1年生の時は(一軍の)レギュラーどころか、1年生チームでしか使いませんでした」
■背筋を伸ばして球が受けられる特徴
──Jクラブから誘われるくらいの選手なのに?
「今でこそボランチで献身的な守備を武器にしていますが、入学当初は10番をつけるような攻撃的な選手で守備の意識が全然なかった。ただ、ボールを受ける姿勢が良くて、背筋を伸ばしてヘッドアップをしながら球を受けても体幹がぶれない。これは守備的なポジションの方が技術が生きると思ったんです。1年生チームでは主にトップ下。2年生になってレギュラー組に入れる時には、サイドバック、ボランチ、時にはセンターバックとユーティリティー的に、いろいろやらせました」
──納得したのですか?
「当時はヤンチャなところがあり好きなことしかやりませんでしたから、何でサイドバック? と納得がいかないようでした。最初は仕方なくやっていましたが、持ち前の負けず嫌いな性格と強いものに向かっていく姿勢があって、聞く耳を持っていたことが大きいですね」
──守備的なポジションに目を向ける契機は?
「3年の時に一度は大学選抜に選ばれながら落とされたことがありました。その後、デンソーカップでも大学選抜に選ばれて、ユーティリティープレーヤーとして最優秀選手に選ばれた。自分はもっと可能性があるんだと本気で思ったんでしょうね。それから生活態度が変わったし、本気で守備をやるようになって、4年生の時に急成長しました」