羽黒山が妻の訃報を受けても務めた横綱土俵入り「帰ったらお経が始まっていた」

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「土俵入りがきついんだ」

 横綱土俵入りでしこに合わせて「よいしょ!」と声をかけるのは、相撲見物の楽しみの一つだ。大鵬は幼い娘との間で、相撲のことを「よいしょ」と呼んでいたという。

 元横綱からよく「土俵入りだけでもと言うけど、土俵入りがきついんだ」「重い綱と化粧まわしを締めると、小さい子が腹に抱きついた状態でしこを踏む感じだよ」などと聞いたが、それでも期待に応えなければならない。

 71年の夏巡業は北の富士班と玉の海班に分かれて行い、虫垂炎を患っていた玉の海が途中で帰京した。ひと足先に日程を終えた北の富士は、玉の海班最終日の秋田・八郎潟巡業に駆けつけ、不知火型の土俵入りを披露して観客を喜ばせている。

 北の富士は雲竜型。「不知火型って格好いいからいっぺんやってみたかったんだよ」と言ったが、それから2カ月足らずで玉の海が急死するとは、誰も思わなかった。

 八角理事長(元横綱北勝海)は、一人横綱の時に現役を引退した。直前に休場が続き、「お客さんに土俵入りを見せられないのが本当に申し訳なかった」と述懐する。

 朝青龍は2007年、けがを理由に夏巡業休場を届け出ながらモンゴルでサッカーをして大問題になったが、それまでは在位4年半、巡業を休んでいない。白鵬(現宮城野親方)も休場がちになるまでは皆勤を続けた。

 照ノ富士の一人横綱は秋場所で丸2年。番付の重みや権威を保つだけでなく、ファンの楽しみを奪わないためにも、次の横綱が待たれている。

▽若林哲治(わかばやし・てつじ)1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。

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