入団直後から“普通でなかった”思考回路…完封を褒めても「何かありましたか?」の表情だった
「自分の考えている目標のレベルが、フツーと違う」
──プロ入り当初からいまのような姿を目指していたと。
「かもしれません。札幌ドームで完封した試合があった。終わって10分後くらいですか、マッサージをしていたので声を掛けたんです。『ナイスピッチング!』ってね。すると、えっ、それが、どうかしましたか? 何かありましたか? という表情なんです。人の話を聞いてるのか、おまえのことじゃないかと言いたいくらい(笑)。
喜怒哀楽をあまり出さない選手でも、試合直後は神経も高ぶってるし、充実感みたいなものがどっかに出てる。なのに大谷は、言われてみればそうですね、みたいな反応。浮かれることがまったくない。目標というか、いまは目指すところの過程で、僕はこんなもんじゃないんだという。まだまだパワーもないから、努力していかなきゃならないんだと。だから有頂天にもならないし、満足することもない。
自分の考えている目標のレベルが、フツーと違うんでしょうね。僕も含めて、周りはジャイアンツの高橋由伸のような中距離ヒッターと思ってたかもしれませんけど、本人は全然、違ってたのかもしれない。いや、まだまだこんなもんじゃないですよと、あえて口に出すこともしない。なにしろ、そういう話をしないですからね」
──本人と打ち解けて話したことは……。
「それが、ないんですよ(苦笑)。こっちも選手と親しくなるのはどうかなというスタンスなんだけど、選手よりは気を使って、いろいろなことを聞き出そう、なるべく話を長くもっていこうと思う。けど、話はすぐに終わっちゃいますもん(笑)。『エース』(大谷の実家で飼っていた愛犬)はどうした? 元気にしてる? と水を向けると、『はい、元気にしています』と。そこで終わっちゃう。あまり親しくしてないから分かりませんけど、向こうから見れば、僕なんかおじいちゃんですよ。だから会話が進まないのか。他の選手とはもっと深く、話はしてると思うんだけど(笑)」(おわり)