「~石畳の路地裏散歩~ ヨーロッパの窓」上野美千代 写真・文
ヨーロッパの古い街並みを散策中に見つけた美しい窓や個性的な窓を撮影したポケットサイズの可愛らしい写真集。
マンションや建売住宅が並ぶ日本の街中の風景に慣れ親しんだ頭には、美しい窓や個性的な窓といわれてもなかなか想像できないが、百聞は一見にしかず。ページを開くと本当に窓のオンパレードなのだが、決して退屈することはない。
まずは表紙にもなっているフランス・ルシオンで撮影されたピンク色の壁と白い枠のコラボレーションからなる窓をじっくりと見てみる。
計算されたように絶妙のバランスで壁を這うツタの緑と、窓枠に置かれた壁と同系色の花鉢がつくり出す一枚の絵のような風景は、自分たちの楽しみのためではなく、外を通りかかる人たちを喜ばせようとする住人の心遣いとしか思えない。そんな一枚の写真から、街を愛する住人の心さえ伝わってくる。
ドイツ、ベルギー、スペインなど、ヨーロッパ各国のさまざまな路地で撮影された窓の写真が、それぞれ「開き窓」や「木組み・レンガ」「アイアン・ガラス」などに分類されて並ぶ。絵本の中に紛れ込んだようなドイツ・ハーメルンの枠飾りがユニークな窓、レストランだろうかチェコ・プラハの夜、温かな明かりが漏れてくるステンドグラスの窓、そして重厚な彫刻で装飾されたスイス・ジュネーブのビルの窓など。添えられている情報は撮影地だけなのだが、並ぶ窓を見ているうちに、散策しながらその街並みを楽しんでいるような気分になってくる。