「~石畳の路地裏散歩~ ヨーロッパの窓」上野美千代 写真・文
中には、本物の窓と並んで描かれた窓から人が通行人を眺めているだまし絵の窓や、神話や聖人、歴史などをモチーフにした美しいフレスコ画で装飾された窓、スグラッフィート(かき落とし技法)で周囲を幾何学模様で彩られた窓、オーストリア・ウィーンの白と黒のモザイクが斬新な窓など、周囲と競い合うように凝りに凝った意匠が施されているアートな窓もある。スペイン・バルセロナのビルでは、壁一面をキャンバスにして、そうした技術のすべてを駆使して作り上げたような、なんとも豪華な窓のある風景が見られる。
路地を歩きながら窓に向けられたレンズは、時折、箸休めのように窓の近くの壁にそっとかかる郵便箱や、思わずノックしたくなるような味わいのある扉、路地の窓下に置かれたベンチなどにも向けられる。
そんなページをゆっくりとめくりながら、今度、旅に出たときは名所名物へと急ぐだけでなく、視線を上げて周囲の街並みを眺めてみなければもったいないなと反省。ひとときの紙上散策がそんな気持ちのゆとりをもたらしてくれる。(光村推古書院 1780円+税)