変わりダネ芸術本特集
「図像学入門」山本陽子著
美術館に行っても展示された日本美術に美しさを感じたり、感動できない人もいる。でも、本書の著者はそれでも美術が分からないということではないという。なぜなら、それらはそもそも美術作品として作られたわけではなく、仏像なら仏の姿を、絵画ならば物語や景色を伝えるのが本来の目的だったからだ。本書は、作品が本来どういう意味だったのかを読み解く「図像学」という視点から、日本美術の新しい楽しみ方を解説した美術テキスト。
光源氏も紫の上も福笑いのおかめにしか見えない「源氏物語絵巻」など、名作を俎上に、素朴な疑問に答えながら、それぞれの生まれた背景から作品を鑑賞する。美術館が退屈に感じられる人には格好の案内書だ。(勉誠出版 1800円+税)