今も現役のエロ本自販機探して全国行脚
「全国版 あの日のエロ本自販機探訪記」黒沢哲哉著
ネット上に無修正画像が氾濫する時代、エロ本はもはや死語と化したが、ある世代の男性たちは、エロ本と聞くと一抹の郷愁を呼び起こされるに違いない。ミラーフィルムで隠され、昼間は見えなかった扇情的な表紙の雑誌が、夜になると蛍光灯の光に妖しく浮かび上がる、あのエロ本自販機にお世話になった方も多いのではなかろうか。
町中ではすっかり見かけなくなったエロ本自販機だが、実は今でも全国各地の街道沿いで、現役で働いているという。
本書は、今や風前のともしびとなったエロ本自販機を探し求めて全国をくまなく巡った著者による探訪記。
エロ本自販機の歴史は、1970年代半ばの雑誌の自動販売機の登場とともに始まる。すぐに自販機専用に作られた「自販機本」と呼ばれるエロ本が登場し、瞬く間に全国に展開。
しかし、アダルトビデオが登場すると急速にその役目を終え、自販機本というエロ文化はわずか10年で幕を閉じる。
町中から姿を消した自販機は、長距離トラックのドライバーたちが立ち寄る街道沿いのオートスナックやコイン洗車場にその活躍の場を移し、ひっそりと営業。そこでエロ本だけでなく、ビデオやグッズを商品にした「エロ自販機」へと変化し、小屋状の家屋に収納されて今も密かに営業を続けている。
著者は3年半をかけて、そうした街道沿いで余命を過ごしている全国の自販機(小屋)350地点を巡る。
埋もれたエロ自販機探索の方法や、かつて全国展開していたという男性へのロングインタビューで知られざる自販機業界の裏話を聞くなど、内容も盛りだくさん。
消えゆくエロ文化遺産を記録にとどめる記念碑的奇書だ。(双葉社 2200円+税)