建築美を誇る世界各地のアーケード

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「世界のアーケード」写真・アフロ、テキスト・水野久美

 アーケードと聞くと、昭和なたたずまいの、ちょっと寂れた商店街を思い浮かべてしまうが、本書に収録されたそれは、一味も二味も異なる。

 歴史と芸術性を備えた見ごたえのある建築美を誇る世界各地のアーケードを紹介。18世紀末の産業革命以降、ヨーロッパを中心に自然光が降り注ぐガラス屋根を持つ通り抜けの商店街が盛んにつくられた。一般的にアーケードと呼ばれるそれは、フランスでは「パサージュ」(高級なものは「ギャルリ」)、イタリアでは「ガレリア」と呼ばれ、一種の社交場の役割を果たしていたという。

 その代表格ともいえるのが、「ミラノの応接間」との別名を持つ、イタリアの「ヴィットリオ・エマヌエーレ2世のガレリア」(1877年建造)。

 高級ブランドが立ち並ぶ初代国王の名を冠したこのガレリアの中央十字路は、高さ47メートルのガラス製ドームに覆われ、ミラノから見た4大陸を表すフレスコ画や、モザイク床で彩られ、豪華で壮麗そのもの。

 対照的に、現存するパリ最古のパサージュ「パサージュ・デ・パノラマ」(1800年開通)は、狭い通路にカフェやレストラン、小切手・古コインなどの店舗がひしめき、パリの粋が凝縮したような空間だ。

 他にも、ロンドンの金融街シティー地区にある格調高いビクトリア風の市場「レドンホール・マーケット」(1881年再建)や、さまざまな建築様式が調和する幻想的なハンガリー・ブダペストの「パリ・ウドバー」(1912年再建)、そして1461年建造というトルコ・イスタンブールの「グランド・バザール」など、どこか懐かしさを抱かせる独特の空間に酔う。

 国内外39のアーケードを網羅。次の旅行では、現地のアーケードにも足を運んでみよう。 (青幻舎 1600円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

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