120万セットが売れた鉄腕アトム
「日本懐かしソノシート大全」水落隆行著
家庭用VTRがなかった時代、テレビアニメのヒーローやヒロインと会えるのは週に一回のお楽しみだった。そんな時代の子どもたちにとって、好きなときに好きなだけ、大好きなアニメの世界に触れられる「ソノシート」は、まさに宝物だった。
ソノシートとは、薄くてペラペラに曲がるほど軟らかく、半透明で、赤や青、黄などポップな色をしたレコード盤の一種である。
本書は、昭和30年代に登場したソノシートのコレクションを紹介しながら、その歴史や魅力を解説したムック。
昭和34年、ニュースや音楽情報を伝える「ソノシートブック」(ソノシートとブックレットのセット)が創刊。「目と耳で味わえる」メディアミックスのはしりだった。その後、学習教材などさまざまなジャンルのソノシートが製作され、書店で販売されたが、一方で雑誌や商品の付録、販促用のおまけとしても流布。
そして昭和38年、当時大人気だった「鉄腕アトム」のソノシートが発売されると、120万セットの大ヒットを記録する。アトム版は主題歌と声優の語りなどで構成されていたが、その後のマンガソノシートは「主題歌+新録ドラマ」が定番となり、数々のヒット作品が生まれる。
アトムに加え、「鉄人28号」、累計400万枚もの特大ヒットとなった「オバQ音頭」、特撮ものの「ウルトラQ」、そして怪獣ブームの火付け役となった「怪獣大図鑑」の伝説の5タイトルは、同時代を過ごした人には垂涎、涙ものの再会だろう。
ほかにも、「スーパージェッター」や「天才バカボン」「巨人の星」など、ジャンル別に六十余タイトルを収録。ポータブルレコーダーにのせられ、波打ちながら回転するソノシートから聞こえてくるチープなあの音色まで懐かしく思い出される。
(辰巳出版 1500円+税)