「フタバスズキリュウ もうひとつの物語」佐藤たまき著
50年前に発見された首長竜の化石。長く検証が行われてこなかったこの化石に息吹を与え、女性科学者賞を受賞した著者の自伝。新種記載に至るまでの経緯が興味深い。(ブックマン社 1700円+税)
■日本一有名な某生物の名付け親
某生物の図鑑が大好きで、リカちゃん人形の代わりにそのフィギュアで遊んでいた少女が、時を経て学者となった。本書は、某生物マニアの女の子が運命に導かれるようにしてその研究対象と出合い、日本一有名になった某生物の名づけ親になるまでの自伝。
得意の文系科目で点を稼いで大学では「その生物」学者のいる理学部地学科に進学し、研究会やインフォーマルな勉強会に参加。本格的に勉強するために米国やカナダに留学して、研究に没頭するもののポスドク問題などに悩まされる。そして自身の興味を追求するなかで出会った人々に助けられながら、この分野において重要な意味を持つ論文を発表するに至り、研究者として大きなターニングポイントを迎える様子が描かれている。
先人たちの努力のバトンを確実に受け取って、さらに研究を深めていく様子が興味深い。著者が名付けたその生物の発見者との対談や、論文の共著者となった研究者との鼎談も収録されている。マニアな道を究める同志はもちろん、研究者という仕事に興味がある人にもおすすめしたい。