「習近平の大問題」丹羽宇一郎著
中国がアジアで覇権を求めているのではないかという不安がある。だが、フランスが植民地の独立運動を抑えるために歳出の4割を投じ財政を悪化させた歴史を見ても分かるように、領土拡大は採算が合わない。覇権争いの歴史の中で生きてきた欧米人には、中国の行動は覇権を求めているように見えるが、歴史的にはアメリカと中国は対立していた時期より協調関係にあった時期の方が長い。
60年代、ソ連と対立していた中国はアメリカにとって「敵の敵は味方」だったのだ。元来、中国は巨大な市場であり、アメリカの対中戦略はそこに収斂する。日本は、日本、中国、アメリカの間で「三方よし」を貫くべきである。商社マンで、中国大使を務めた著者が、中国の今とこれからを解き明かす。 (東洋経済新報社 1500円+税)