「鴎外の恋 舞姫エリスの真実」六草いちか著
文豪・森鴎外が留学中の体験をもとに執筆した処女作「舞姫」。その物語の舞台となったベルリン在住の著者が、ヒロイン・エリスのモデルといわれる女性の実像に迫るノンフィクション。
著者は、偶然出会ったドイツ人のM氏から、オーガイという軍医の恋人は「僕のおばあちゃんの踊りの先生だった人だ」と打ち明けられ興味を抱く。モデルとなったエリーゼは、帰国した鴎外の後を追って1888年に来日。鴎外の妹の回顧録には「路頭の花」(=娼婦)なる記述があり、研究者の間でも娼婦説が流布していた。著者は舞姫の描写と当時のベルリンの状況を重ね合わせながら、2人の出会いの場となった教会などを特定。
一方で、M氏の家系を調べるなど、丹念にエリーゼの実像を明らかにしていく。
(河出書房新社 1250円+税)