「魚食の人類史」島泰三著
人間は魚を食べるが、霊長類が魚を食べる例はごくまれだ。ニホンザルのような樹上生活者である霊長類は果実などを食べても、魚を食べる例は少ない。大学の研究者グループが、オランウータンが棒を使って水中のナマズを追い上げている写真を発表して衝撃を与えた。だがそれは泳いでいるナマズではなく動けなくなったナマズで、そのオランウータンは人間に飼われていたとき、餌として魚を与えられたことがある。野生の個体が泳いでいる魚を捕食することはない。霊長類の魚食は特定の状況下で起きる例外的なことなのだ。
生存競争に向かないホモ・サピエンスが「魚食」によって生き延びたという意外な歴史を解き明かす。
(NHK出版 1400円+税)