「つりが好き」井伏鱒二他著
イイダコ釣りは技術が要る。餌は不要で、ネギの白身、茶碗のかけらなど、なんでもいいから白いものを細い板にくくりつけ、内側にまくれたかぎ針を3本取り付ける。おもりを付けて沈めておくと、イイダコがその白いものの上に座る。手応えがあったら糸を引くと、かぎに引っかかってあがってくる。引きどきを誤ると逃がしてしまうから腕が要るのだ。
友人の宇野逸夫の故郷では、イイダコは赤い色のもので釣るという。宇野は隠岐の島出身だから、太平洋のタコは白好きで、日本海のタコは赤好きなのか。(火野葦平著「ゲテ魚好き」)
ほかに、幸田文「鱸」、矢口高雄「二重の呪文」など、釣りと釣り人に関わる面白い話がてんこ盛り。
(河出書房新社 1650円+税)