気を付けるのはコロナだけじゃない!命と健康を守る本特集

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「高血糖は万病の元」長山淳哉著

 今回の新型コロナウイルス騒動によって、今まで以上に健康のありがたさを痛感した方も多いのでは。また、感染症がこれまで当たり前にできていた受診や通院の自由さえ奪う事実にもわれわれは直面した。そこで今週は健康をはじめ、医療や死にまつわる本を紹介。この機にもう一度、自らの健康について考えてみよう。



 糖尿病は、20歳以上の総人口の約24%が患者とその予備群というまさに国民病。放置すると、「網膜症・腎症・神経障害」の3大合併症のみならず、がんや心疾患、脳血管疾患、認知症などの発症リスクが上昇する。

 本書は、元九州大学大学院准教授が、自らの体験をもとに血糖値コントロールの科学的な対処法を説いた健康テキスト。健康診断で高血糖や糖尿病の指標となるヘモグロビンA1c値が高いことを自覚していた著者だが、専門医を受診することはなかった。なぜなら、日本糖尿病学会推奨の糖尿病の食事療法では糖尿病を悪化させてしまう事実が証明されたからだという。そこで、簡易血糖測定器を入手して、毎食後に計測することで独自の食事療法にたどり着く。

 その血糖値と食事の関係を記録とともに振り返り、高血糖・糖尿病の改善・治療にどう向き合うべきかを説く。さらに、糖尿病と、糖尿病を起因とする各合併症の発症のメカニズムなども解説。患者と予備群必読の書。

(緑風出版 1980円)

「法医学者の使命」吉田謙一著

 2020年に米国で起きた警察官による黒人男性殺害事件。誰もが、死因は頚部圧迫による窒息死と思っただろう。しかし、頚部を圧迫中に急死したからといって死因が窒息死とは限らないという。身体拘束や暴行、事故、過労、医療などの「行為」によって生じた心理的ストレスが誘因となって心筋梗塞などの突然死が起きることがあるからだ。

 例えば、法医学者の著者が担当した、スナックで隣り合わせた客に暴行を受け中年男性が死んでしまった事件。解剖・検査した著者は、死因を慢性虚血性心疾患による病死と鑑定する。暴行が死の誘因になったことは間違いないが、死因が病死の場合は被疑者が無罪とする原則がある。しかし、裁判では裁判官は殴打との因果関係を認め、被告に傷害致死罪を宣告した。

 こうした異常死の判断はどのように行われるか、その実際を自ら扱ったケースや実際に起きた事件を例に解説。法医学、刑事司法、刑事裁判の実情を明かしながら、冤罪を生む日本の死因究明制度の問題点とその重要性を説いたテキスト。

(岩波書店 880円)

「日本人の死因の不都合な事実」岩瀬博太郎、柳原三佳著

 司法解剖医の岩瀬氏によると、死因を突き止めるための法医解剖とは死者の権利を守るためだけでなく、犯罪や流行病、災害など社会にとっての危険を察知するための手段であり、生きている者の権利を守るために必要なものであるという。

 例えば、夫ら4人に青酸化合物を飲ませ、3人を殺害して死刑判決を受けた筧千佐子被告の事件。被告の身近にいた別の男性4人も不審死をしており、被害者は少なくとも8人に上る。警察が1人目で死因を突き止め犯人を逮捕していれば第2、第3の被害者は生まれなかったのだ。

 しかし、日本で病院以外の自宅や路上などで亡くなった約17万の変死体のうち、司法解剖されるのはわずか。死体の外表や現場に不審なところがなければ事件性なしと判断され、司法解剖には回されない。

 猪の牙で襲われたと思われた女性が実は散弾銃で撃たれていたなどの実例を挙げながら、わが国の法医解剖制度の現実と、充実の必要性を説く。

(WAVE出版 1650円)

「40歳からの予防医学」森勇磨著

 介護や車いすに頼らず自立した生活を保つ「健康寿命」を、一日でも延ばすための知識と習慣を教えてくれる健康手引書。

 まずは健康診断のデータを正しく理解するための「絶対に知っておくべきポイント」を解説。

 高血圧はあらゆる大病を招く生活習慣病ゆえ、40歳を過ぎたら血圧計を必ず買うべきと説く。病院では本来の値よりも血圧が上がってしまう場合があるからだ。1カ月に1回ほどでいいので自宅での血圧測定が欠かせないと助言。さらにLDL(悪玉コレステロール)やGFRなどが示す値と病気の関係、受診すべき値の目安などを紹介。

 他にも、がんの予防医学、うつ・糖尿病に効く「地中海食」やアルコールとの上手な付き合い方などの食事術、理想的な睡眠法など。健康寿命を延ばすための「生活習慣の正解」、そしてメンタルヘルスに至るまで。人生100年時代を謳歌するための病気にならない知識と習慣74項目を伝授。

(ダイヤモンド社 1650円)

「ジェネリック医薬品の不都合な真実」キャサリン・イーバン著、丹澤和比古ほか訳

 ジェネリック医薬品(後発品)は、今ではアメリカの医薬品供給の90%を占めているという。しかし、著者は後発品が効かない、ひどい副作用があるなどの患者の声を耳にして取材を始める。

 本書は、世界一厳しいアメリカ食品医薬品局(FDA)の目をすり抜け、効果や安全性を偽った「薬」が輸入され、人々の健康を脅かしている実態を告発するリポート。

 アメリカで使用されている後発品の約40%はインド製。また先発品にせよ後発品にせよアメリカの薬に用いられる有効成分の80%がインドと中国で作られているという。

 2002年、コレステロール低下薬リピトールの後発品製造に乗り出したインド最大の製薬企業ランバクシー・ラボラトリーズを舞台にして、企業が規制を迂回して不正に手を染め、莫大な利益を上げていく実態を克明に描き出す。医療保険の支出が増大する一方で後発品に救いを求める日本でも、この出来事は決して対岸の火事ではない。

(翔泳社 2750円)

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