著名人の愛読書から読書のコツまで 読書にまつわる本特集
「あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた」ブルボン小林著
ステイホーム中にすっかり「読書」が習慣になった人も多いだろう。その一方でちょっぴり気になるのが、他の人たちの読書。そこで今回は、著名人たちが手にした本から読書のコツまで、読書にまつわる本をご紹介。
本との新しい出合いがあるかも!?
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「有名人が愛読書にあげている本で、漫画や写真集は除き、かつ未読」という条件で選んだ本をコツコツ読んでいった著者。途中、有名人の読書には共通点があることに気が付いたという。それはパワーだった。
たとえば、大谷翔平の愛読書はスペンサー・ジョンソン著「チーズはどこへ消えた?」。チーズがふいに消えることで悩んだり行動したりする筋書きの前後に、この話がいかに示唆に富んでいるかが記されていた。啓発本ってここまでやってこそか、と感心。そして「気にするな」が答えのこの本、きっと彼は読む前から会得していただろうと、とつづる。
女優長澤まさみの愛読書、遠藤周作著「わたしが・棄てた・女」は深刻な筋書きながら、登場人物たちにたくましさと存在感があり明るい印象がある。棋士・藤井聡太の「深夜特急」(沢木耕太郎著)など、著名人総勢50人の愛読書ガイド。
(中央公論新社 1320円)
「わたしのなつかしい一冊」池澤夏樹編、寄藤文平絵
生まれたての本に出合う喜びもあるが、本当によい読書の記憶は「昔」の中にあるという。
氏は19歳のときクルト・リュートゲン著「オオカミに冬なし」を読んだ。実際にあった話で、捕鯨船が帰途につく前に海が氷結。それを知った2人の男が救出プランを立てる……という冒険物語。再読すると目の前で死にかけている人や犬を救うか、捕鯨船の200人救出のため先を急ぐか、トリアージを迫られていることに目がいった。当初は冒険の細部に目がいっていたが、作者の力点が倫理にあることに気づいた。
映画監督・河瀬直美氏は「ムーミン谷の彗星」の再読で親子といえども、一人の人として尊重する姿を、荒川洋治氏が度々読み返すという国木田独歩の「運命」や「日の出」を取り上げ、子どもと大人が忘れてはならないことを描いている、と評する。
江國香織、中村吉右衛門ら50人の本と本にまつわる思い出を開陳。
(毎日新聞出版 1870円)
「月に3冊、読んでみる?」酒井順子著
テーマに関連する3冊を選んで紹介する書評コラム。
「人生も下山してこそ」のテーマで取り上げるのは、竹内洋岳著「下山の哲学」。著者はあるとき、ものすごい長生きをしない限り、今の自分は人生の後半を生きている……と思いつつ本屋に行って出合ったという。竹内氏は、8000メートル級を次々と制覇した登山家だが、本書では登頂ではなく、峰々をいかに下山したかを克明に記していた。悪天候など登るときよりも事故が起こりやすいのが下山だが、一歩ずつ自分の足で下りるしかなく、下山時に新たなルートを開くこともあると。「下山もまた挑戦の一部なのだ」と著者は読後をつづる。
ほか、ブレークのピークを下りた経験を持つ山田ルイ53世が、一発屋仲間にインタビューする「一発屋芸人列伝」、人生の着地をつづった上野千鶴子著「在宅ひとり死のススメ」を紹介。さらに「家族に代わるつながり」のテーマでは、岩松了著「薄い桃色のかたまり/少女ミウ」、矢部太郎著「大家さんと僕」、木村紅美著「雪子さんの足音」など、「生きる」「男」「家・家族」「旅・鉄道」など10ジャンル、93テーマで紹介する。
(東京新聞 1540円)
「読書する家族のつくりかた」印南敦史著
「子どもが全然読書をしない」という悩みを持つ親は多いだろう。しかし考えてみれば当たり前。ゲームやSNS、動画配信サービスなど読書以外にも楽しめるものが増え、大人でも読書をする機会は少ないのだ。
そこで著者が提案するのが、家庭内での読書のゲーム化だ。子どもが楽しめるように、まずは本を1冊読むごとにポイントが貯まるルールにするのだ。貯まったポイントでジュース1本、お手伝いを1回休めるなどメリットを手にできるようにすればモチベーションも上がる。また本を読まない原因のひとつは「苦手」だからではなく、習慣化していないため。ならば、わざわざ時間をつくるのではなく、朝、ベッドの中で10分読むといい。
ほかにも「借りてきた本公開タイム」を設ける、「親は特定の本を押し付けない」「好きな本の紹介場をつくる」など、親子で行う25のゲームを紹介。読書は修業ではなく、本来「楽しい行為」であることを思い出そうと著者は訴える。
(星海社 1155円)
「頭は『本の読み方』で磨かれる」茂木健一郎著
本を読むことのメリットは、知性の地層が自分の中に形成され、何が起こっても応用が利く「頭のよさ」を手に入れられることだという。
たとえば表現力もそのひとつ。本を通じてさまざまな表現力を知ることは自己表現がうまくなることにつながる。本を通しての疑似体験や、そこで生まれた感情の動きは実生活でのモノサシにもなりうる。そんな著者が薦めるのが、M&Rフリードマン著「選択の自由」。物事の善悪は国に決められることではない、との論旨をつづる本書は、社会の在り方と向き合うひとつのきっかけとなる。夏目漱石著「硝子戸の中」は、漱石本人がどういう人だったかがよく表れており、「本当のやさしさ」とは何かを知りたいときに読んでみるといい。
お薦め70冊とともに、「『積ん読本』も確実に脳の肥やしになる」「古典は現代のわたしたちに置き換えながら読む」など、本の読み方のコツを紹介。
(三笠書房 1430円)