「夜のお店解剖図鑑」高橋哲史著
「夜のお店解剖図鑑」高橋哲史著
新型コロナウイルスによる一連の騒動を体験して痛感したことのひとつが、酒場での気の合う仲間との会食や酒を酌み交わすことの大切さではなかったろうか。
設計者としてこれまでに100店舗以上に関わってきた著者は「夜の飲み食い処は豊かに暮らすためのインフラ」だという。本書は、その著者がお酒を提供するさまざまな業態の夜のお店を図解化した面白イラスト本。
定食屋や町中華から、ぼったくりバーまで、各店舗の内部をバックヤードまで含め、天井を外して斜め上から見下ろしたような鳥瞰図で解説。
例えば、国内に10万軒あるというスナック。
店内にはエンジのチンチラ張りの既製品の1人掛けソファが連結され、ベンチのように並び、テーブルはメラミン化粧板。
片隅にはカラオケステージがあり、その横の壁には見たこともない演歌歌手のポスターが数枚張られているなど。その典型的な店のつくりを紹介。
そして、客がキープしたボトルの棚には地震で落下しないよう「こぼれ止め」の設置を勧めるなど、お客としてはもちろん、店のオーナーやデザイナー、施工屋など、さまざまな視点から各店舗の特徴を解説してくれる。
以降、今ではなかなかお目にかかれなくなったおでんの屋台や、最近、新たな業態が登場している「シン角打ち」(酒屋の一角を飲酒スペースにしたもの)、そして格式あるオーセンティックバーや一見さんお断りの京都のお茶屋さんまで。
内装デザインのポイントや店内要所のサイズ、働く人の所作や服装、そして店内の至る所に配された仕掛けまで公開。
さらに夜のお店を開業するまでのプロセスや、あったら行ってみたい未来のお店の想像図までを解説する。開業を考えている人には参考書としてもおすすめだ。 (エクスナレッジ 1980円)